2024/08/20
『「EXCELLENT・JAPAN 展開促進事業プロジェクト」事業の概要と展望』と題し、これまで5回の連載シリーズで、事業全体の概要およびプロジェクトの3本柱「ICTプラットフォーム」「マーケティングプラットフォーム」「生産プラットフォーム」の目的と施策内容を紹介してきました。最終回となるこの第6回目では、再度、プロジェクト概要と各プラットフォームの解説を交えながら、プロジェクトチームを統括する座長の小澤廣幸氏に登場いただき、総括としてプロジェクトの進捗状況とこれからの展望を述べてもらいました。
プロジェクトの概要を再確認
鞄・ハンドバッグ・小物に従事する国内企業が、国内外のマーケットで競争力を持てるよう、該当する国内企業にとって様々な優位性のある施策を実施し、安心・安全の製品を国内外に広めることを目的に、日本鞄ハンドバッグ協会(𠮷田輝幸会長)が展開している「EXCELLENT・JAPAN 展開促進事業プロジェクト」。令和元年度より始まり今年度で3年目を迎えたこのプロジェクトは、一般社団法人日本皮革産業連合会の国産皮革・製品広報事業と連携し、その助成金を活用しながら「鞄ハンドバッグコラボ活動」として継続的に推進。前記の目的に向けた多種多岐にわたる施策を実施するため、該当企業の代表者からなるプロジェクトチームを編成し、事業運営に取り組んでいる。
日本鞄ハンドバッグ協会ではこの事業の前段階として、平成28~30年度に「JAPAN BRAND 戦略・調査研究事業」を実施。そこでは、ビジネスモデルやファッション、ブランディング、知財分野の専門家と共に、日本の鞄・ハンドバッグ・小物業界を取り巻く環境変化を把握しどのように対応するべきか、業界としてブランド力をつけるための視点などを学び、事業のメインコンセプトと方向性を明確にした。
「この3年間の調査研究事業によって、われわれ鞄・ハンドバッグ・小物の業界規模や置かれている立場を把握し、業界組合としてのスケールメリットを活かして“何をしなければいけないのか”という事業目的を明確化したことが非常に有益なことでした。現在、外資系ブランドの進出や異業種からの参入も増え、業界全体が縮小傾向にあり、IoTやAIを活用した流通システムなど、時代に沿った新しいビジネススタイルへと商環境も大きく変化しています。業界企業1社1社がこのような現状や時代の変化に対応していく事は非常に困難です。だからこそ、個々ではできない事をそれぞれメンバーが協力し合い、協会団体として業界全体のメリットのために1つの大きな波を起していくことが必要ーーという強い思いで、EXCELLENT・JAPAN 展開促進事業プロジェクトが始まりました」
プロジェクトの核となる
3つのプラットフォーム
前記のJAPAN BRAND 戦略・調査研究事業において、「『製品×サービス=商品』によるライフサイクル・ヴァリュー(生涯価値)の提供」というメインコンセプトが明確となった。
「われわれが携わる商品の価値を考えた時、作りっぱなし売りっぱなしではなく、これからは顧客価値を高めた商品提案を意識していかなければなりません。それを追求し実現するために、『ICT』『マーケティング』『生産』の3つのプラットフォームを形成しました。業界の川上から川下の中で、職人さん・製造メーカー、卸販売、小売のそれぞれが活性化できるよう、この3つの柱を軸に事業計画を整理し、具体的な施策を打ち出しています」
《ICTプラットフォーム》
QRコード活用の普及促進、
情報コンテンツの充実も目指す
QRコードを活用した情報発信システムは、加盟企業が展開する製品にQRコードが記載されたカードやシールを付随させ、それを購入した消費者がスマートフォンなどからQRコードを読み取り、協会専用のトップページにアクセスして情報を得る仕組み。日本鞄ハンドバッグ協会がまとめた情報コンテンツは、協会バナーのほか、業界最新TOPICSや、鞄・ハンドバッグ・小物の豆知識、商品選びのアドバイスやランドセルの歴史といったおもしろ知識、製品・素材のお手入れ方法、メンテナンス方法、皮革用語辞典などがあり、加盟企業はそれを共有し活用することができる。公的機関の協会が管理・発信する情報としての安心感、信頼感があるため、このシステムを活用して自社製品情報やブランド情報を発信することは大きなメリットと言える。
「今後コンテンツの内容をより充実し、消費者にとって魅力的なものへと進化させるとともに、業界イベントやキャンペーンなどの告知も積極的に発信します。また、協会加盟各社にはこのQRコードによる情報発信システムを是非活用いただきたい。現在、システムの活用法についてわかりやすく説明した動画やスライドショーを準備しております。出来上がり次第、協会ホームページにて掲載いたしますので、ご覧ください」
《マーケティングプラットフォーム》
記念日事業で売場の活性化を図る
協会が取り組むSDGsを考察
消費者との接点を強化する施策実施を担うマーケティングプラットフォームでは、ICTプラットフォームと生産プラットフォームで行う諸施策を消費者に告知し、商品が消費者に直接情報発信し続けられるシステムの構築を目指している。なかでも「記念日事業」では、皮革製品の販売拡大に優位性を持たせる方策として、皮革素材の使用比率が高い商品(鞄・ハンドバッグ・財布等)の販売拡大を目的に、商品に関連する記念日(サイフの日、かばんの日、いいバッグの日など)に絡めたキャンペーンを実施するなどプロモーション活動を行っている。
「どんなに優れた商品を作っても、出口販売がなければ意味がありません。記念日イベントやキャンペーンを企画し、売場と一緒に盛り上げて購買機会を高めることも重要です。これまで百貨店との取り組み実績もありますので、これをモデルケースに今後は専門店やチェーン店など様々な小売業態との取り組みも広げ、販売拡大に繋がる売場活性イベントの頻度も充実させたいですね。また、これからの消費者意識への対応として、SDGsに関する情報を収集し、協会が取り組むべき具体的な目標を設定して発信していく事も進めています」
《生産プラットフォーム》
「技術認定試験」の
国家資格化に向けた活動推進
技術認定制度を国家資格化するため、日本鞄協会、日本バッグ協会とのコラボレーション事業を進行。技術に対する資格制度を設けて有資格者の作る商品の価値を高め、さらに、ICTプラットフォームで実施しているQRコードを活用した情報発信と絡めながら、消費者への広い認知と社会一般に評価してもらえるようアピールし、ブランド化して他商品との差別化を図っていく。
「先の10月には厚生労働省への技能検定制度(国家資格)申請に向けての作業も開始し、書類作成を含め着々と準備を進めています。また、若い人たちをはじめより多くの方々の業界参入に向け、資格取得を目指す人材が増えるような活動にも注力していきたい」
プロジェクトを支える3つのプラットフォームは、それぞれの目的・役割は違えども、各施策を推進することで全てが連動している。技術レベルの資格化で商品に優位性を持たせ、その情報を広く発信することで消費者の理解と意識を高め、効果的な販売機会を作ることで売り場が活性化し、販売拡大による利益が生産や流通に戻ってくる。
「今まさに、各プラットフォームの施策が第一歩を踏み出した状態です。これからさらに前へと足を出すことで、そのメリットや効果、課題点など色んな事が見えてきます。1つ1つは小さいですが、業界全体がまとまれば大きな力となり、知恵を出し合えば新しい発想による方向性も見えてきます。来年度も、広く業界のメリット・活性化に繋がる事業を展開し、協会団体のスケールメリットを活かした施策を実施していく予定です。協会会員企業の皆様には、引き続きお力とアイデアをご提供いただくと同時に、協会が保有する情報やサービスをどんどん活用して、各自の利益発展に繋げていただきたい。また、未加盟企業の皆様も、協会ならではのサービスを享受できるよう、是非、ご参加いただきたいと思っております」
●日本鞄ハンドバッグ協会
(鞄関係)
☎︎03-3862-3511
(ハンドバッグ・小物関係)
☎︎03-3851-5278