2024/08/20
鞄・ハンドバッグ・小物に従事する国内企業が、国内外のマーケットで競争力を持つため、様々な優位性のある施策を実施し、安心・安全の製品を国内外に広めることを目的に、日本鞄ハンドバッグ協会が展開している「EXCELLENT・JAPAN 展開促進事業プロジェクト」。連載第5回目では、プロジェクトの3本柱のひとつ『生産プラットフォーム』が進めている「技術認定試験」の国家資格化について、生産プラットフォーム委員会の宮 昌弘委員長にお話を伺いました。
生産プラットフォームの役割
業界自体がシュリンクしている状況の中、我々は何をすべきなのかを考えた時、生産プラットフォームとして重要視しているのは、やはり製造技術の継承と後継者育成です。現在、技術認定事業が実施している「技術認定試験」を基盤として技術のある人材を育成しています。生産プラットフォームでは、その技術認証認定制度を国家資格化するために、日本鞄協会、日本バッグ協会とのコラボレーション事業を進めており、さらに、ICTプラットフォームで実施しているQRコードを活用した情報発信と絡めながら、消費者の方々にも広く認知してもらい、社会一般に評価してもらえるようアピールし、ブランド化していくことを目指しています。
皮革業界では、皮革や革製品について一定の知識を有している人たちを「レザーソムリエ」として育成し、より多くの人たちに天然皮革の魅力や良さを知ってもらう取り組みとして、レザーソムリエ資格試験を実施しています。革に興味のある若い人をはじめ多くの人が受験しているのですが、それに付随して“ものづくり”の方にも興味を持ってもらい、さらに、その技術力を実際の仕事として活かしてもらえるようアプローチし、業界全体の作り手の層を厚くしていきたいと考えています。
日本のものづくりのレベルは非常に優れており、海外のスーパーブランド製品を作っている技術者のそれと比べても負けてはいません。そういった部分も含めて若い人たちに向けてアピールしていきたい。技術認定試験の3級は専門学校生から受験できますので、そこから業界への入り口の裾野を広げていきたいですね。
資格・ライセンス制度を設けることで技術力のレベルが可視化され、これからものづくりを目指す人たちと、すでに技術者として製造業務に従事している人たちの技術力向上の目標やモチベーションアップにも繋がります。また、認定制度により1級と認められた技術者のハイレベルな技術力で作られた製品は、国内の消費者だけではなく、海外に対しても“メイド・イン・ジャパン”の質の高さを明確に認知してもらえます。
技術認定制度を国家資格化することは、“業界のものづくり”をブランディングすること。その価値を高め、広く認知してもらうことで、製造業だけにとどまらず、卸業・小売業にもメリットが波及し、業界全体の活性化に繋がることだと思っています。
これまでの活動実績と今後の展開、目標
昨年度の活動実績は次の通りです。
○技能検定制度(国家資格)に向けての手順の整理
○厚生労働省への技能検定制度(国家資格)申請に際する必要書類の整理
○現行まで実施されている技術認定制度での試験運営(実技・課題審査・学科)の確認、および部門(鞄・ハンドバッグ・小物)ごとの難易度の違いの把握
○技能検定制度(国家資格)実施団体よりの情報収集
今年度は、引き続き技術認定委員会との連携を強めて、先の10月には厚生労働省への技能検定制度(国家資格)申請に向けての作業を開始しました。また、試験運営(実技・課題審査・学科)の設計作成、試験問題の作成、審査内容の作成に着手し、試験会場や設備などの現場確認や、技能検定制度(国家資格)実施団体との連携を図っていきます。
先ほども申しましたが、技術認定制度の国家資格化により、“業界のものづくり”をブランド化させていくことを目標に活動を進めてまいります。“ものづくり”の観点から、若い人たちをはじめより多くの方々の業界参入に向けて働きかけ、他のプラットフォームと連動しながら協会への加盟促進にも力を入れていきたい。ゆくゆくは、靴やベルト、手袋など他の皮革製品業界とも連携して、各皮革関連業種における技能試験の国家資格化を目指し、国内皮革産業全体の底上げに繋げたいと考えています。