2024/08/20
高まり続ける“海外欲”
前回のコラムの中で、中国人にとってのアウトドアは「海外旅行という消費欲の行き場」という側面があることをご紹介した。とは言っても、アウトドアレジャーで「海外旅行欲」が全て代替されているわけではない。ほぼ毎月、中国各地の生活者(主に富裕層~中高所得層)へのインタビューを行っているが、特に今年に入ってから、アイスブレイク(対象者の緊張を解くための雑談)で「趣味は何?」と聞くと、判で押したように「ホントは海外旅行が大好きなんだけど、今は行けないから…」という回答ばかりが出てくる。この「海外旅行」熱は、コロナ前よりも高いと感じるほど。
政局も含めて、極めて不安定な2022年、いつになったら自由な海外旅行が再開するのかを予測することは難しいが、少なくとも「いつか復活する」というその時に備えて、インバウンド需要への対策は多くの企業で必須な施策の一つだろう。
さて、その時に備え、「インバウンド需要」という側面から中国市場を俯瞰して見ておくことをお勧めしたい。そのために時計の針を2019年まで巻き戻そう。
最大の訪日者市場
2010年に860万人だった訪日外国人数は、その後の十年で倍増どころか、4倍に届く勢いで伸びていった(2019年:3188万人)。この最大の功労者が、右肩上がりの成長を続けていた中国である。中国からの訪日外国人数は、2010年の100万人から、960万人にと9倍超の伸びを示していた。尚、この伸びを踏まえ、政府はコロナ禍に陥る直前、「2030年に訪日観光客を6000万人に」というビジョンを策定しており、現時点でもその修正は行っていない。
そして、人数以上に日本経済にとって大きいのが、中国人観光客の消費力。他国からの観光客と比較しても高い金額を「買い物」に注いでいた。「爆買い」と言われる言葉が生まれたのも、これらの中国人観光客による買い物行動の影響を受けてのこと。観光地となりやすい東京圏・関西圏、また博多周辺では、家電量販店から高級百貨店まで、中国人店員の姿を見ない日がないほどであった。
匠・信・文
何がそこまで中国人観光客の「爆買い」を生んでいたのか?そこに、中国から見た「日本の良さ」が隠れている。
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