2024/08/20
無骨なメンズからユニセックス、レディスまで、幅広くバッグ・財布を展開する(株)バギーポート(福井大器社長)。その中でユニセックスの「バギーズ・アネックス」は好調だ。市場としては一昨年まで好調が続いた財布はメンズ・レディスともに縮小傾向だった。
それまではキャッシュレス化にも関わらず2万円以上の財布がよく売れたが、昨年あたりからコンパクトか薄マチ以外は難しくなり、11月展でもエンボスシュリンクシリーズのスタンダードタイプ3型とスマートタイプ4型のうち、スマートタイプにオーダーが集中した。
「バギーズ・アネックス」もバフレザーシリーズなどの財布が動いている他、バッグ市場のユニセックス化を追い風に、ブランド全体で伸びている。
福井社長によると、「全体の売り上げに占めるアネックスの割合は2割強ですが、最近の伸び率は一番で、メンズ系の売り場が男女共存のMDを組み始めた頃から顕著です。商品企画が女性ということで、メンズライクなカバンをベースに女性ならではの繊細な表現が生きており、それが男女ともに支持されているんじゃないでしょうか」とのこと。
企画営業+貿易の感覚を強みに
商品力の高い提案が図られる
バギーズ・アネックスを担当している五島亜子さんは、大学で4年間プロダクトデザインを専攻し、新卒で入社した。大学では主に生活雑貨などの造形に取り組んできたので、バッグでも日常使いできる要素は得意で、そこに独自の表現がプラスされブランドの世界観になっている。
デザイナーが企画と営業を兼ねるのがバギー流なので、五島さんも企画をしながら営業し、取引先との打ち合わせを繰り返しながら、市場の変化に対応したものづくりをする。ユニセックス化の流れをいち早く掴んだのもそのスタイルがあったからだ。
メンズの売り場に女性がバッグを買いに来るようになった時に、メンズライクなアネックスがマッチし、「仕切りトート」のように女性の使いやすさを意識して作ったものが、小ぶりで軽量なバッグとして男性にも買われる、というように、男性が作るユニセックスとはまた違った感覚のものを、企画営業の中から生み出していった。
そして最近、五島さんの企画営業に貿易の仕事が加わった。同社のものづくりは各ブランドに担当の企画営業がいて、全体をディレクターの長南二美夫氏が統括するというスタイルで進む。長南氏は革の輸入から、海外での生産コントロール、そして製品の輸出入まで貿易全般を見ているが、その仕事を手伝うようになり、バギーズ・アネックスはさらにステップアップした。
「最近私も海外に同行させてもらう機会が増え、ヨーロッパに行くとイタリアなどで目にするものからいい刺激を受けています。建物一つとっても独特だし、日本では見られないようなデザインとか模様とか、特に色使いが独特で、バッグ作りに生かせるものがたくさんあります。それに海外はリサイクルに対する意識も進んでいて、うわべではない本物のサステナビリティをファッションに見る事ができます。そういう部分でもヨーロッパから得るものは多く、リサイクルレザーの財布などいくつかのシリーズの参考にさせていただいてます」。
また発想のヒントになっているだけでなく、例えば革の財布の場合、革を選ぶところから、国内外の工場に縫製を依頼し、海外ならインポートして営業するところまで、デザイナー自身が一貫して見られるので、ロスがなく内容の濃い商品開発に繋がっている。
日本製帆布に海外の感覚を取り入れた「Lima」
バギーらしさを海外市場にアピールする足掛かりに
もちろん「素材でも縫製でも、基本には日本製の良さがあるから海外が生かせる」というのがバギーポートの一貫した考え方だ。特に帆布については日本製が世界一だという。アネックスでも帆布の定番に18オンスのアーミーダックがあるが、この帆布は劣化するのではなく経年変化する。革以外でこんなに味のある素材は日本の帆布だけで、それを縫製する技術も含め、海外からわざわざ買い付けに来るほど高い評価を得ている。
そんな日本特有の帆布を使い、長南氏と五島さんの貿易を生かした新しい試みを進めている。ブランドは「バギーズ・アネックス」ではなく、新たにアルバートンの帆布を使用した「Lima」。
これは作りも素材も日本製だが、日本にはあまりない感覚を追求した商品。オリジナルで色にこだわったアーティスティックなプリントを施し、アメリカンカジュアルとイタリアンカジュアルを融合したようなものになっている。販路としては、よりコアな客層を考えており、今後は海外での展開も視野に入れている。
現在「バギーポート」はスイスのエージェントを通してヨーロッパで展開されているが、今後は「バギーズ・アネックス」や「Lima」など同社ブランドの海外比率を高めていく。そのためにもブランディングを強化し、今まで企画のテーマに掲げてきた独自性をさらに高め、“売り場で被らない商品”を目標にしている。
長南氏がブランド全体を見るようになってからは、展示会で似たようなものが並ぶことがなくなり、取引先からも選びやすいと好評だ。特にバギーズ・アネックスの新しい提案は好評で、定番化として残る確率も高くなっている。
素材からオリジナルで開発している帆布のバッグや、独特な色使いのイタリアンレザーの財布など、定番化しているシリーズはまさにバギーズ・アネックスらしい“被らない商品”で、こういう差別化のある商品を今後もさらに充実させていく考えだ。