2024/08/20
ここ近年、おしゃれなカフェや雑貨店が軒を連ね、ものづくりを目指すクリエイターの拠点としても人気の高い蔵前エリア。伝統とモダンが共存する街として、より幅広い層の人たちが集まり、魅力的な商圏と注目されています。今回の特集では、この蔵前で鞄・バッグ業界に関連した企業が展開しているショップを紹介します。
ETiAM 蔵前フラッグシップストア
THOROUGH BRACE(サラブレイス)
Neutral Gray
Arukan
(株)ヤマト屋
LUNA BORSA(ルナ ボルサ ショールーム)
Re-Bone(リボーン)
REN 蔵前店
m+ KURAMAE(エムピウ 蔵前)
LITSTA(リティスタ)
TheContainerShop
KAWAMURA LEATHER
ETiAM 蔵前フラッグシップストア
伝統と新しさ、カフェとバッグが共存する環境から
高級で洗練されたバッグの魅力を発信
(株)サックスバーホールディングス(木山剛史社長)のリテイル部門、(株)東京デリカが展開するオリジナルブランド「ETiAM」(エティアム)の旗艦店として2021年4月にオープン。トラディショナルでシンプルなスタイルを基軸に、上質な素材と職人の手仕事にこだわったバッグの魅力を、ものづくりの街であり人気カフェが集まる蔵前から発信している。
店内は上質なバッグとこだわりのカフェが共存する独特な空間になっている。歴史と伝統の街、蔵前のイメージに合わせ、売り場什器には海外から取り寄せたアンティーク家具を使用し、上質感を演出する。
カフェは独自焙煎したコーヒーをバリスタが淹れる本格的なスタイル。2階にはテラス席もあり、店内にバッグを、眼下には蔵前の街を見ながらコーヒーを楽しめる。ここではバッグを買いに来てカフェを利用してもいいし、カフェに来たついでに工房の物作りに興味を引かれるのもいい。
そういう環境だからか、携帯ショルダーなど気軽に買える商品はカフェの利用客にもご好評頂いており、また目的買いでは定番アイテムを中心に、仕事に持つバッグなどをじっくり選ばれる傾向にある。
これからの時期、店内には新商品も充実し、芯材や作り方自体を変えカジュアル化したライフスタイルに寄り添った柔らかいアイテムが増えている。縫い目や金具をなるべく露出せず、綺麗なフォルムを強調したもの、オリジナル真鍮金具の上にさらに黒ニッケル加工を施したオールレザーのモデルなども登場している。
店舗はオープンから1年半を過ぎ、徐々に認知度を高めているという。店長の石川敦史氏によると─
「オープン当初から蔵前は注目のエリアでしたが、そこにカフェとバッグの融合というスタイルは新しい試みだったと思います。1年以上経過して蔵前はさらに洗練され、より進化しています。周りの環境と一緒にブランドが注目されるのは歓迎すべきことですが、ただ蔵前が持つトラディショナルな良さは変えずに守り続けたい。アンティークな家具がある店内に象徴されるように、伝統的な良さと今風の新しいもののミックス感覚というものがETiAMの他のブランドにはないところです。その部分は街とも親和性があるのでこだわっていきたい」とのこと。
展示会やポップアップをきっかけにETiAMの常設売り場も増えており、Instagramや雑誌で見たというお客様が蔵前に来ることも多いという。今後はさらに認知度を深めていくため、蔵前の旗艦店と連動して強化していきたいとしている。
TEL:03-3864-2655
営業時間/11:00-19:00(火曜定休)
THOROUGH BRACE(サラブレイス)
東京のブルックリンで脚光をあびる
ファクトリーブランドショップ
国際通り沿いの角地に存在感を示す“THOROUGH BRACE”は、鞄・バッグ・服飾雑貨の企画製造販売を手掛ける(株)サラ・ブレイスが、2006年の創業よりメーカーとして培ってきた知識と技術を注ぎ込んで立ち上げた自社ブランドを扱う店舗兼ショールーム(売場面積17坪)。展開するアイテムは、カバン、ハンドバッグ、財布、革小物で、1点1点に多くの時間をかけ、すべて職人の手作業によって仕上げられており、時代に左右されない存在感を、普遍的な魅力を意識しながらもコンテンポラリーな表情を備えている。また、店舗の裏手には自社生産工場を構え、新作がいち早く店頭に並ぶのも同店ならではの特徴だ。
TEL:03-5821-6627
営業日:月~土/9:00-18:00
Neutral Gray
町歩きで出会う
奥まった場所に存在する至極のSHOP
ファッショングッズ、ライフスタイルショップやカフェなどが多く点在し、エリアの客層も若返りが顕著な蔵前に2019年1月にオープンした(株)高屋(本社東京・高橋悌一社長)の直営店「ニュートラルグレイ」(9.5坪)。シンプル、軽さ、日本製をキーワードにしたPB「ニュートラルグレイ」の初の直営店で、開店以来、フルラインが見れる旗艦店としてブランドの魅力を発信してきた。
同店は道を1本入った奥まった所にあり、入店前にわくわく感を提供する“知る人ぞ知る”的な雰囲気。店内はモルタルの内装で仕上げられ、その無機質な空間にシンプルな「ニュートラルグレイ」のアイテムが気持ちいいくらいフィットしている。
開店当初の来店客層は、20~70代と幅広かったが、最近は蔵前の注目度もあって20代、30代が非常に多くなった。また、年2回(春夏、秋冬)「ニュートラルグレイ新作展示会」も同店で行われるので期間中はバイヤーも多数訪れる。一般客とバイヤーのそれぞれ異なった目線から得る情報も貴重だという。
シーズン新製品の導入時期は、春夏ものが2月初旬、秋冬ものは8月下旬。また、同ブランドのECサイトやインスタグラムも頻繁に更新。EC、SNSと実店舗でブランドの世界観を発信し、「モノマチ」などものづくりのイベントにも積極的に参加している。
「小さな店や知られてないブランドの中から自分好みのアイテムを見つけながら町歩きするのが蔵前の楽しみ方。蔵前散歩に来た際に来店して頂けるような環境つくりをしていきたい」と語る小林久恵店長。新たなファン層つくりに注力する。
Neutral Gray KURAMAE SHOP
TEL:03-5809-2241
営業日:木・金・土・日/12:00〜18:00
Arukan
蔵前発のブランドとして
粛々とぶれない発信
(株)高屋(本社東京・高橋悌一社長)が昨年8月に東京都台東区蔵前・国際通り沿いにオープンした「Arukan」直営1号店は、約15坪のショップスペースを持ち、蔵前発の地元ブランドとして発信している。
「Arukan」は同社の基幹ブランドで、1928年にスタート。幅広い年齢層に支持されてきたバッグブランドで、大人の女性の様々なシーンにフィットする豊富なラインアップを誇る。
同店の商品構成は「Arukan」をメインに、”編み””織り”をテーマにクラフト感と今の時代性を併せ持ったシリーズ「Arukan F」(アルカン F)をトータル展開。ショップ空間全体で「Arukan」ならではの上質な暖かさを伝えている。また、同店が入るビル上階には㈱高屋の本社ショールームもあり、新規商品導入や入れ替えもスムース。オープン2年目に入り蔵前発のブランドとしてより認知してもらえるよう注力している。
以前の「Arukan」の購買層は40~60代が多かったが、同店やオンラインショップオープン後は、若年層も訪れるようになった。店としては、20~30代の人たちにより多く来店してもらえる「場」つくりを目指す。
「蔵前はポテンシャルのある町。ものづくりを背景とした店が多いので、もの寄りのことに興味のある人たちやものに対する感度が高い人たちが集まってくる。古い町だが、商業地にない新旧あいまった魅力がある」と語る(株)高屋・薄井芳典商品部部長。同店を訪れる若年層もそういった人たちが多い。
今後はインスタグラムなどSNS、オンラインでの発信を強化するとともに、様々なイベントに積極的に参加し、一般消費者との交流で「Arukan」のファンを広げていきたいと語る。
TEL:03-5809-3031
営業日:火・水・金・土・日/12:00〜17:00
(株)ヤマト屋
本社ショールームにショップ兼カフェ機能をプラス
免税店登録でインバウンド向けにも万全の体制
今ではカフェと雑貨屋の集まる人気エリアだが、2010年に(株)ヤマト屋(正田誠社長)が墨田区から本社を移転してきた当時は、蔵前はまだものづくりと問屋の街だった。注目されるようになったのは、浅草を訪れる人たちが蔵前まで足を伸ばし、老舗の問屋や飲食店など一般のテナントにはない魅力を発掘してきたからだと言われている。
BtoBの街からBtoCが共存する街へ変化する中で、同社はモノマチなど地域に密着したものづくりイベントへの参加、地域の環境美化活動、それに蔵前に人を呼ぶショップ化など、メーカーの枠にとらわれない取り組みで蔵前を盛り上げてきた。
蔵前に本社を移してすぐ、“大江戸清掃隊”という活動に参加した。これは台東区長から蔵前三丁目の里親に任命され、街の美化運動を積極的に行っていこうというもの。春日通り・江戸通り・国際通りに挟まれた三角地帯を週1回、会社総出で清掃するなど、住み良い街づくりに貢献している。蔵前はもともと歴史があってキレイな街だったこともあり、こうした地道な活動が実は今の蔵前人気を支えてきた要因でもあるのだ。
そして蔵前人気が出る前から注力しているのが一般購入できるショップ機能。展示会や商談に使われる2階ショールームを、国内外のバイヤーだけでなく一般消費者まで来られるようショップ機能とカフェ機能を充実させた。
公認のカフェではないが、来客用に淹れるコーヒーは本格的で、カフェの激戦地蔵前で周辺の専門店にも負けないくらいの味を追求する。コーヒー以外のメニューもそれぞれ素材からこだわり、大きな合同展にカフェスタイルで出店する時などは、来場者の中には本当のカフェと間違えて入ってくる人もいるほど。
「1階で本格的にショップ兼カフェをやったら、とよく言われますが、メーカーができる範囲を越えないようにしています。確かにコーヒーの味は、この界隈でも多分2番目に美味しいのですが…。しかしショップにしても、そのためだけに人をつける負担まで考えるとリスクが大きく、お客様がいらしたら誰かが対応するようにし、あくまでも本業のための取り組みと考えています」と正田社長。
ショッピング機能の方は街歩きの一般客が来ることもあるが、ほとんどはポリカーボネイト薄合皮バッグ(特許取得済)など、付加価値の高い同社オリジナル製品を求めてくる目的買い。他にテディベア協会の理事を務めているので、ショールームの一角にあるテディベア・ギャラリーへの集客がある。また一昨年前から女性インスタグラマーたちとプロジェクトを組み、女性たちの意見を取り入れた商品開発からSNSを使った発信まで行なっており、ネットを見て地方から来るファンもいる。
インバウンドへの対応も早く、会社内の見学に対応してからは、海外から見学や研修を兼ねて小型バスで買い物ツアーに来ることもあるという。そのため免税店登録もしており、決済はクレジットカードや電子決済にも対応している。
中国の旅行会社と提携しているので、コロナ前には週に1組が来ていたほどインバウンド需要は多かった。コロナ禍の現在は減ったが、また今後の再開に期待しているという。特に来春には延期されていた羽田空港内の商業施設への直営店オープンも予定されており、そこからの誘致が増えそうである。
ショールーム営業時間:平日10:30〜16:00
TEL:03-5829-6161
LUNA BORSA(ルナ ボルサ ショールーム)
国際通りが江戸通りから分岐する蔵前2丁目交差点が目の前のルナボルサショールームは、代表者の長年の経験から独自の仕入れルートを持ち、“良い商品をより安く”をモットーに、主にレディスバッグを販売している。開店は1995年で蔵前地域でのバッグ販売としては先駆け的なショップだ。
店の前には、今や必需品となった折りたたみ式のエコバッグやトート、サコッシュなど売れ筋商品が破格値で並べられ通行人の目を引いている。
12坪の店内には、ハンドバッグ、ショルダー、財布などが所狭しと置かれ、中央にはその時々の目玉商品が並び、2~3ヶ月のサイクルで季節に合わせた商品を提供している。
TEL:03-5820-8751
営業日:月~土/10:00-18:00
Re-Bone(リボーン)
約半世紀の実績を持つエキゾチックレザーの輸入卸販売会社を前身に、その経験とノウハウを生かして2016年に設立した合同会社リボーン(高島成央社長)のオフィシャルショップ。より多くの人にエキゾチックレザーの魅力を伝えるため、気軽にエキゾチックレザーの素材と製品に触れ合える場所として、2019年7月に国際通り沿いの福谷ビル2階にオープンした。
ショップでは、クロコダイルやパイソン、オーストリッチ、リザードといった代表的なエキゾチックレザーに加え、水蛇、キャッツアイ(カロング)、エイ、シャーク、アザラシ、ピラルク等、かなり珍しい素材も多種多様取り揃え、それを熟練職人の手作業で仕立てたオリジナル「Re-Bone」製品を全種類展開している。レザークラフター向けに在庫皮革を小ロットでも販売。エキゾチックレザーに関して豊富な知識を持つ高島社長の話が聞けるのも、ショップを訪れる楽しみのひとつだ。
☎︎03-5829-4024
営業日:水・木・金/12:00-17:00
土・日・祝/11:30-18:00
REN 蔵前店
“革だからといって気にせず、日用品として使い倒して欲しい”ーーそんな思いで始まったレザーブランド「REN」。オリジナルのピッグスキンやゴートスキンなど素材の風合いを重視し、主張しないシンプルなものづくりにこだわった革製品を展開している。
蔵前2丁目交差点から少し入ったこの路面店は、今年2月で10周年を迎えた。商圏として注目される前から展開しているショップでは先駆的存在といえる。外からも見渡せるゆったりとしたスペースの店内には、バッグ・財布を中心とした商品が程よくディスプレイされ、蔵前散策を楽しむ人たちも入りやすい雰囲気となっている。革素材ながら値頃感のある価格帯なので、レザー好きだけでなく革製品初心者の購入も多いとのこと。
☎︎03-5829-6147
営業日:火~金/12:00-18:00
土・日・祝/11:00-18:00
m+ KURAMAE(エムピウ 蔵前)
建築デザイナーのキャリアを持つ村上雄一郎さんが、2001年に立ち上げた革製品ブランド「m+」(エムピウ)。「作り手+誰か」によってものが完成するとの想いから、名前の頭文字“m”にプラスを付けたのがブランド名の由来だ。使うほどに風合いが増すイタリア製のタンニン鞣し革を中心とした素材を使い、熟練職人の手で作り上げられるアイテムは、財布小物をはじめ、バッグ、ベルト、スリッパなど幅広い。
ショップは2007年にアトリエ・事務所を兼ねてスタートし、現在は2階にオフィスを移して1階全てを店舗として運営。SNS等での人気商品をきっかけにブランド認知も高まり、平日の昼間でも客足は絶えない。「自分が持ちたい、欲しいと思うものを軸に、ヒット商品を超えるような“新しい定番”を今後も提案していきたい」(村上さん)
☎︎03-5829-9904
営業日:水・木・金/14:00-17:00
土/12:00-17:00
LITSTA(リティスタ)
デザイナーであり職人の佐藤祐樹さんと由香里さんのお二人が、2010年に立ち上げたレザーブランド「リティスタ」。使うほどに味と風合いが感じられ、使う人だけのものに仕上がる革素材を用い、ハンドメイドで作り上げられるアイテムは、どこか懐かしい雰囲気とシンプルデザインが特徴だ。定番の小銭を並べて収納できるコインウォレットを始めとする各種財布小物を中心に、バッグ、ステーショナリーなど多彩な革製品を展開している。
2018年よりスタートしたこの蔵前ショップでは、リティスタ商品の販売に加えてバックヤードに製作アトリエも設置し、お客の反応が感じ取れる場所で“ものづくり”を行っている。また、ショップの一部を使って、キーケースやブレスレットなど簡単に作れるワークショップも開催し、好評を得ている。
☎︎03-5829-4860
営業日:火~日/12:00-19:00
TheContainerShop
2018年にスタートした、かばん縫製工場から生まれた素材と環境に優しいファクトリーブランド「コンテナショップ」。大量に余る裁断生地を廃棄する現状をストップしたいとの思いから、“出来るだけゴミを出さない”デザインでバッグを提案している。布幅に合わせたサイズ展開や、ハンドル用の革の余りをタグに再利用したり、工業資材をバッグの生地に活かすなど、作り手ならではの“余すところのない”アイデアが随所にちりばめられている。また、「毎日をカラフルにハッピーに」の思いも込めた多彩なカラー展開もこだわりのひとつだ。価格帯も4千円台から1万円台後半までと値頃。
ショップはオフィス&工房のある2階に併設されており、現在は月に3日(第4週の金・土・日/11-17時)のみオープン。毎月発表する新作はオンラインでPRし、ネット販売での売上も堅調。「作りやすく、販売しやすく、手に取りやすい」
かばん作りを目指している。
TEL:03-3861-5110
KAWAMURA LEATHER
隅田川にほど近い厩橋の袂にある皮革素材専門ショップの「カワムラレザー」は、今年8月でオープン4周年を迎えた。ショップを運営する川村通商(株)は、長年革作りの業界に携わってきた商社。その利点を生かし、専門業者だけでなく一般の人にも、品質の高い革を“1枚から”販売することを実現している。
40坪のフロア半分が販売スペースで、取り扱う革はおよそ20種類・13色ほどを揃え、商品を切らさぬよう在庫管理も徹底している。オンラインショップでの販売とも連動しており、スタッフ各自がSNSを活用した情報発信でショップ認知度も高まってきた。購入目的は、趣味のレザークラフトでの用途や、レザーグッズ系クリエイターの素材調達など幅広い。
また、フロアの約半分に「ワークスペース」を設置。裁断台や革漉き機、クリッカーやミシンが用意され、買った革の簡単な加工ができるのもポイントだ。クラフトマンの「つくりたい」を叶える革屋として、ものづくりをする人達がワクワクできる場所を提供している。
TEL:03-6841-0038
営業日:火~日/11:00-18:00